教員の土田です。

授業のリアクションペーパーで、どうすれば研究を深堀りしていけるのか、という質問がありました。
研究アイデアチェックリストとしては、矢谷流研究アイデアチェックリストが非常に参考になるかと思うので、そちらに目を通していただき、自身のアイデアを整理していただくのが良いかと思います。

研究を深堀りすることに関連して、アイデアを出す際に気をつけておくべき点について、雑多なメモですが書きだしてみました。これらは主に私が所属していた神戸大学工学研究科 塚本・寺田研究室において、両先生がよくおっしゃっていたことを自分なりにメモしたものです。これらは研究ビギナー向け、初めて研究室に配属された学生向けの記事となります。誰かの助けになると幸いです。


  • 何が面白い研究かは、アイデア出しをすれば自然とわかってくる
    • 面白い研究かどうか、いきなりピンとくるのは難しい
      • とにかくたくさんアイデアを出し、先生方のフィードバックを得て経験を積むことが重要です
        • そのため、「とにかく数を打ってみる」ことが重要です。
  • 研究活動になるか否かについて
    • そこにリサーチクエスチョンがあるかどうか
      • こういうことをやってみるとこんな効果がでてくるのでは?といった、試してみないとわからないこと
        • 例えば単純に「こんなゲーム作ります!」「こんな作品作ります!」だけだと研究にならない
          • このゲームや作品のある機能によって、こういう効果があるのではないか?といった仮説があるかどうか。さらにその効果を検証することは可能かどうか。を考える。
  • 何が問題だと思っていて、どう解決したいのか、を考える
  • 提案システムが使用されている状況をクリアにしておく
  • 良い変わったアイデアが浮かんだ時に、ストレートなアイデアに勝てるかどうかを考えておく(アイデアを説明する際にはそのあたりを抑えておくと良い)
    • 目的を考えた時に、それでいいのか?ストレートなやり方と比べて面白い点はあるか?
      • 例えば、目の動きを見るだけで、その人のリズム感を測りたい、と考えた場合
        • 調べてみると面白いかもしれない。しかし、実際に音に合わせて指をタップさせる場合と比べて何が嬉しいのか?直接タップした場合と比べて利点はあるのか?
          • ストレートなアイデアと比べてどの点で優れているか」を考える。説明する、。
    • 間接的な指示の良さは何か?直接指示するよりも良いシチュエーションはあるか?
      • たとえば交差点で事故防止のために必ず交差点の角をチェックする人になりたい場合(そのような能力を効率的に身につけたい場合)
        • 直接的:直接指示する。明示的にここを見よと示す。
        • 間接的:角に何か注意が向きやすくなるものをを示す。
          • こういう目的で実施するからこそ意味があると主張できるようにする
          • 直接的ではなく間接的にやる理由を説明できる必要がある。
            • 提案手法が活きる面白いシチュエーション」を考える
    • 何か変なこと言ってるなというアイデア、それ誰が使うんだろ?というアイデアが思いついたら、何か使えそうな具体的な用途・場面を考えてみる
  • 物理的なセンサが何に使えるかを考えてみる。センサから考える。
  • アイデアにセンサを足してみる。センサつかってみる。
  • 世の中のトレンドを見る
    • 最近の生活の変化を考えてみる
    • それに伴って、今何をやるべきか、を考えてみる 
  • 気になるワードがあったらまず調べてみる
    • 調べて興味が湧く。そこからアイデアをひねってみる
    • サーベイはどちらかというと技術を探すのに使う
    • 何か新しいことを探してみる
  • 何か問題があった際にコンピュータでどう解決するかを考えてみる
  • 現状どういうものが既に存在するかを確認する。
    • 例えば目的で検索をかける。
      • もし同じものがあったとしても、何がさらにできたら面白いか、を考える。
  • 誰でもできそうな研究アイデアは微妙
    • この研究室だからこそができる、があると良い
      • 例えば筋電センサなどで記録して解析するという話の中にエンジニアリング、技術的な要素はない
  • あることを解決するために妙な道具を使う
  • 新しい箇所はどこかを説明する
    • 何が面白いかを説明する
  • 何かの目的に特化させてみる
  • 方向性は良いけどやろうとしている手法が面白くないパターン
    • 他の人がどうやっているかを見てみる
    • 論文を読んでみる
      • どういうものを新しいものと主張して取り組んでいるか」をチェックする
  • アイデアになっていないパターン
    • 例えば「ドリブル練習のために自分のドリブルしている姿をAR表示させてディフェンスすることで自分のドリブル練習に活かす」
      • これはまだアイデアの段階ではない
        • ここから何ができるかをさらに考える
          • 最初のアイデアから2~3回以上捻ること
  • こんなことを解決しないといけないのかと思わせる
    • さらに解決方法がトリッキーだと良い
  • 素直でないアプローチを考えてみる
    • 感情推定で、目の動きなどを見る => 普通すぎる
      • 例えば唇をみてみる!
        • ただ結果が出るかどうかの予想で厳しそうかどうかの判断は必要(口は厳しいかもしれない)
  • 研究アイデアNGあるあるパターン
    • よく考えてみるとすでにやられている研究分野とかぶってしまう。
    • 素直なアプローチ、ストレートなアプローチに負ける or 素直なアプローチを使わない説明ができていない。
    • 便利と思って使うが、実は罰を与えられているようなもの。
    • データの取得が難しすぎる
    • 検証ができない
    • 設計の根拠が示されていない

アイデア出しについては、正直正解はよくわかりません。たくさんの人と話す過程で思いついたり、たくさんの文献を読むうちに気づいたり、ひたすら単に考えていたらひらめいたり。。。いろいろなパターンがあり得ると思います。土田としては、ひたすら1人で考えることが8〜9割を締めている気はしています。考えるって具体的になんですか?と聞かれると困ってしまいますが、、一つ言えることは考え続けない限り面白いアイデアは出てきません。ある程度アイデアが固まってきたところ(20~30個くらい自分が面白いかもと思ったものがでたところ)で、2~3人程度の規模のディスカッションを繰り返していくと、良いアイデアとしてまとまってくることが多い気はしています。アイデア出しは辛いかもしれませんが、一番面白い過程でもあるように思います!是非楽しんでアイデア出しにチャレンジしていただけると幸いです。