目次
このページのゴール
Tinkercadの基本操作を学び、自分のネームプレートを3Dプリンタで出力できる状態まで完成させる。
今日のねらい
- Tinkercadの「3Dデザイン」機能が、デジタルなアイデアを物理的な形にするためのツールであることを理解する。
- M5StickC Plus2の筐体の設計を始めるための基本的なスキルを身につける。
- 3Dプリントの準備として、デザインしたデータをエクスポート(書き出し)する手順を学ぶ。
Tinkercad とは
Tinkercad(ティンカーキャド)は、誰でも簡単に3Dデザインや電子回路の設計ができる、無料のオンラインツールです。この講義では、その中でも特に「3Dデザイン機能」に焦点を当てて学びます。
なぜTinkercad を学ぶのか
M5StickC Plus2を使ったプロジェクトでは、ただ回路を組むだけでなく、それを保護したり、より使いやすくしたりするための「筐体(ケース)」が重要になります。Tinkercadは、この筐体を自由にデザインできるツールです。
- アイデアを形に: 頭の中で思い描いた「M5StickC Plus2を腕時計型にしたい」「ロボットの顔にしたい」といったアイデアを、デジタルデータとして具体的にデザインできます。
- 3Dプリンターとの連携: Tinkercadで作成したデータは、3Dプリンターでそのまま印刷できる形式(.stlファイルなど)で簡単に書き出せます。これにより、自分のデザインを実際に手で触れる「モノ」にすることが可能に。
- 物理的なプロトタイピング: デザインを試作し、サイズや形状の問題点を事前に見つけることができます。これにより、無駄なく効率的にものづくりを進められます。
まず Tinkercad で、デザインしたモノを出力するという体験をしてもらいます。その上で、個人個人の目的に応じて上位ツールへ進める方がいればいいなと思っています。
他の3Dデザインツールについて
Autodesk Fusion
機械設計発。Autodesk Fusionは、「カチッとしたもの」を作るのが得意なツールです。
- 寸法をきっちり決められる: 「この穴は直径5mm」「このパーツは長さ10cm」といったように、正確な数字で設計できます。
- 設計変更に強い: 一度作ったものを後から変更しても、関連する部分が自動的に調整されるので、修正が楽。
- 組み立てて試せる: 複数の部品を組み合わせて、しっかりはまるか、ぶつからないかなどを確認できます。
Blender
映像・ゲーム発のオールラウンダー。Blenderは、「自由な発想で形を作るのが得意なツールです。粘土をこねるように、自由に形を変えたり、特別な効果を加えたりできます。
- 形を自由に作れる: アニメやゲームに出てくるような、滑らかで複雑なキャラクターなどを簡単に作れます。
- 映像表現もできる: 作った3Dモデルに色や質感をつけたり、動きをつけたりして、アニメーションや映像も作れます。
Rhinoceros + Grasshopper
産業デザイン発。Rhinocerosは、美しい曲線を作るのが得意なツールです。滑らかで連続した曲面をデザインできます。
- 美しい曲面: 自動車のボディや建築物など、滑らかで洗練されたデザインを作るのに向いています
- 自動で形を作る: Grasshopperという機能を使うと、プログラムのブロックを組み合わせるだけで、複雑な形を自動で作り出せます。
1. Tinkercadのはじめ方
Autodeskアカウントの作成(無料)
まずは、Tinkercadを使うための「自分専用のスペース」を作りましょう。
- Tinkercadのウェブサイトにアクセスします。
- 画面右上の「サインアップ」ボタンをクリック。

- 「パーソナルアカウントを作成」を選びます。

- 「電子メールでサインアップ」から、メールアドレスとパスワードを登録します。(GoogleやAppleでサインインでも良いです)※ あとは指示に従って作成を進めてください

Tinkercadへのログイン
ログインをすると、次のようなダッシュボード(管理画面)が表示されます。

これで、あなただけのTinkercadの作業スペースが完成です!
2. Tinkercadの基本操作
新規デザインの作成
Tinkercadで3Dモデリングを開始するには右の「+ 作成」を選択し、「3Dデザイン」をクリックします。

画面上部のファイル名を選択し、ファイル名に「test」と入力します。

Tinkercadは、自動で保存されるため、保存ボタンがありません。
画面左上のTinkercadのアイコンを選択すると、ログイン後のダッシュボードに表示が切り替わり、再度「作成」や「最近使用したデザイン」を開くことできます。
3Dの「かたまり」を置く
画面の右側には、さまざまな形の「シェイプ」(基本図形)が並んでいます。
好きなシェイプ(例:ボックスや円柱)を選んで、画面にドラッグ&ドロップするだけで、簡単に配置できます。もしくはクリックしてからカーソルを動かしても、同様に配置可能です。スライダーでサイズ等も変更可能。

いらなくなったら、そのシェイプを選んでキーボードの「delete」キーを押すか、画面左上の「ゴミ箱」のアイコンをクリックすれば消せます。

画面の向きを変える
作った作品を色々な角度から見てみましょう。
- 画面左上にある「ビューキューブ」をマウスで動かすと、作品を自由な角度から見られます。
- キューブの「上」「右」などをクリックすると、決まった方向から見ることができます。
- 家のマークを押すと初期の表示に戻ります
- その下のボタン「すべてをビューに合わせる」で、シェイプに合わせた画面表示がされます。
- 一番下のアイコンでは、「フラットビューに切り替え(正投影)」と「パースビューに切り替え」を行うことが可能です。

ショートカットが便利なので覚えておくと良いです。
ビューの操作(ショートカットキー)
- 画面の回転:
- 右クリックを押しながらドラッグ
- Macの場合は、トラックパッドで指2本を押し込みながら動かす(右クリックの代わり)
- 画面のパン(平行移動):
- Shiftキーを押しながら、右クリックを押してドラッグ
- Macの場合は、Shiftキーを押しながら、トラックパッドで指2本を押し込みながら動かす(右クリックの代わり)
- 拡大・縮小(ズームイン・ズームアウト):
- マウスのスクロールホイールを前後に回す
- Macの場合は、トラックパッドで指2本を動かす
- 選択したオブジェクトを画面全体に表示:
Fキー- 「Fit view」のFです。今選択しているシェイプが、画面の中央に大きく表示されます。

ルーラー
ルーラーは、Tinkercadでの作業を正確に進めるための「デジタルな定規」です。
オブジェクトの正確なサイズを測ったり、どれだけ動かしたかを確認したりできます。
- ルーラーを表示する: 画面右上の定規のアイコンをクリックし、作業スペースの好きな場所をクリックして定規を置きます。
- サイズを測る: ルーラーを置いて、オブジェクトをクリックするとオブジェクトのサイズが表示されます。
- 正確に動かす: オブジェクトを動かすと、どれくらい移動したかが数字で表示されるので、正確な位置に配置できます。
- 表示を消す: 定規のアイコンをもう一度クリックすると、ルーラーを閉じることができます。
この機能を使えば、オブジェクトの寸法を正確に把握し、より緻密なデザインが可能になります。

ワークスペースの設定・グリッドの編集
右下の設定ボタンを押せば、ワークスペースの大きさなどを変更することができます。グリッドの単位も変更可能

3. シェイプの作成・変形
置いたシェイプの形や大きさを自由に変えられます。
サイズを変える
シェイプを選ぶと、四角いマーク(ハンドル)が出てきます。これをドラッグして引っ張ると、大きさを変えられます。数字を直接入力して、正確な寸法にすることもできます。


色を変える
シェイプを選ぶと、色を変えるボタンが出てきます。好きな色を選んでみましょう。

移動させる
シェイプを動かすには、ドラッグするか、現れるテキストボックスに数値を直接入力してください。垂直に動かしたい場合は、シェイプ上部の▲マークをドラッグします。

回転させる
シェイプの周りにある矢印を動かすと、角度を変えられます。中心からの近さによって、変化できる大きさが2段階で変わります。

3. 足し算と引き算
3Dモデリングの基本は、足し算と引き算です。
これは、複雑な形を最初から作ろうとするのではなく、簡単な形を組み合わせていく考え方です。
足し算(足し合わせる)
これは、複数のシンプルなシェイプを「グループ化」して、ひとつの大きな形にする操作です。Shiftキーを押しながら、シェイプを選択すれば、まとめてグループ化できます。
バンドルグループ:シンプルにまとめるのみ
ユニオングループ:合体させて一つの新しい形を作る
たとえば、家の形を作るには、大きな四角(家本体)の上に、小さな三角(屋根)をくっつけるイメージです。

※ 整列機能も使ってます。パワポなどと一緒です。
引き算(くり抜く)
これは、「穴」のシェイプを使って(もしくはソリッドから「穴」に変更して)、グループ化することで元の形からくり抜く操作です。
たとえば、サイコロのへこんだ部分を作るには、立方体(サイコロの本体)をいくつか配置し、そこに小さな円柱(へこむ部分)を置いて、「穴」のシェイプにしてからグループ化します。

※ 数値測らずに適当にくり抜いていますが、実際は丁寧に長さを確認しながら作業を進めます。
この「足し算」と「引き算」の組み合わせを繰り返すことで、想像以上に複雑な3Dモデルを作ることができます。
鏡像(ミラー)
「鏡像(ミラー)」は、選んだ形を鏡に映したように左右や上下を反転させる機能です。
たとえば、左右対称のロボットの腕を作るとき、片方の腕をデザインしてから、この機能を使って反対側の腕を簡単に作ることができます。
- シェイプをコピペで複製した後、複製したシェイプを選び、画面右上の「鏡像」ボタンをクリックします。
- 表示される矢印の中から、反転させたい方向を選びます。

シェイプを別の面にぴったりつけたいときは、次の手順でもできます。
- 「作業平面」アイコンをクリックします。
- シェイプを置きたい面をクリックします。
- 右上の作業平面にドロップボタンを押せば、その面の上にぴったりと置かれます。

この「足し算」と「引き算」の組み合わせを繰り返すことで、想像以上に複雑な3Dモデルを作ることができます。Tinkercadの3Dモデリングも、これらの考え方が基本になっています。
4. ネームプレートの作成
ここまでに学んだ知識を活かして、自分のオリジナル作品を作ってみましょう。
今回は、3Dプリンターで印刷できるネームプレートを作ります。
使うのは、たった3つのシェイプです。
- ボックス(プレート本体)
- テキスト(文字の部分)
- トーラス(キーホルダーの輪っか)
文字を置く
- 「テキスト」を選び、適当な文字(例:BUNJO)を入力します。
- 複製して別の文字に変える(例:Tsuchida)。大きさも変えてみましょう。

プレートを作る
- 「ボックス」を置き、平たい板のようにサイズを変更します。
- 「半径」のスライダーを動かすと角が丸くなります。

窪みを作る
- プレートを複製して少し小さくし、「穴」に変更します。
- 2つを選んで「整列 → 中央揃え(上下方向は上部で揃える) → グループ化」すると、周りだけ残って真ん中が窪みます。

フックを作る
- ボックスとトーラスを置き、ボックスを穴にしてトーラスとグループ化。トーラスを半分にします。

- 形を調整してプレートの端に配置します。(移動モタモタしてます汗)

- プレートと整列させ、グループ化します。

文字を配置する
- テキストをプレートの上に移動させます。

- グループ化すると一つのネームプレートの完成です。
- 「マルチカラー」にチェックを入れると、パーツごとの色が残せます。

書き出し
- 「エクスポート → STL」を選択すると、3Dプリンターで出力できるデータが完成します。

5. 3Dプリンタで出力
3DプリンターでTinkercadで作ったデータを形にするには、「スライサーソフト」というものを使います。これは、3Dデータを3Dプリンターが理解できる命令に変換するためのソフトです。
ここでは、Bambu Labのプリンターで主に使われる「Bambu Studio」を例に、最低限必要な手順を説明します。
※ 細かい説明は飛ばして、ひとまず作成したモデルを出力させることを目指します。
参考:https://tenagle.com/bambustudio_manual/
Bambu Studioをインストール
Bambu Labの公式ウェブサイトから、Bambu StudioをダウンロードしてPCにインストールします。

Bambu Studioを開くと、以下のような画面が出てくると思います。左上の「サインイン/登録」を押してください。

サインインについては以下のリンク先の資料を確認してください。
リンク ←お茶大生のみ閲覧可

サインインすると以下のような画面が出てきます。「はい」で問題ありません。

Bambu Studioの基本操作
デバイス
サインインしたら「デバイス」タブの左上の3Dプリンタアイコンをクリックしてみましょう。

すでに作業室(文2-302-1)にある3Dプリンタにアクセスできるようになっているかと思います。
※ 「ocha」の場合アクセスできなさそうなので「eduroam」かテザリングでお願いします。ちなみに学外Wifiからもアクセス可能です。

3Dプリンタにはアルファベットと数字の名前をつけていて、下記のような配置です。(尚、homeは私の家にある3Dプリンタなので使わないでください)


A1とA2は「Bambu Lab A1」で、その他は「Bambu Lab A1 mini」です。A1とA2は同時に4つのフィラメントを利用することができます。
また、フィラメントはB1・B2下の棚にたくさん入っているので、なくなったら適宜使ってもらって大丈夫です。(交換方法などは調べるとわかるかなーと思います)
カメラ
他の誰かが使用中の場合は、赤いマークで表示されるので、作業が被ることはないですが、一応出力前に上に何も載っていないかなど、カメラで確認しておきましょう。
試しにプリンタを選択し、「デバイス状態」からカメラの再生マークを押してみてください。

以下のように3Dプリンタ内蔵のカメラでプレートの上の状態を確認できます。便利な時代になりました。。

準備
では、出力に向けた準備を進めていきます。「準備」タブをクリックしてみてください。
以下のような画面が表示されます。

現在選択しているデバイスの「B3」は「Bambu Lab A1 mini」 ですが、「Bambu Lab A1」となっています。
こういう場合は二つ右隣にある「同期情報」を押してみましょう。

上記のようなメッセージが出てきますが、「はい」でOKです。
そうすると自動的にデバイスやノズル情報が同期されます。

モデルを読み込む
では、先ほど作成した.STLファイルをドラッグ&ドロップしてみましょう(もしくは上部にある「追加ボタンを押す」)。
すると、モデルが3Dプリンターの作業台(プラットフォーム)の上に表示されます。
今回はあくまでテストで、フィラメントが勿体無いのでちょっと小さめで出力しましょう。上部にあるスケールボタンを押せば、サイズを変更できます。

スライスする
「スライス」とは、3Dモデルをスライス(輪切り)して、3Dプリンターが一段ずつ積み重ねていくための層に分ける作業です。
- 右上の「スライス」ボタンをクリックします。
- 数秒待つと、モデルが細かく輪切りにされた状態が表示されます。
- 何かエラーが出た場合は対応してください。
- サポート生成は画面左のサポートから有効にすることができます。
- ここで、「プリント時間」や「フィラメントの使用量」などを確認できます。

出力する
- スライスが完了したら、右上の「造形開始」ボタンをクリックします。
- タイムラプスはONにすると造詣が遅くなるのでOffでOKです。今回は後で見たいのでONにしました。
- これで、データが3Dプリンターに送られ、出力が開始されます。

完成〜


6. 課題
基礎課題
自分のネームプレートを作成してみましょう。
提出内容(3つ)
- 3Dプリンタで出力したネームプレートを作業室に置いてある箱に提出してください
- stlファイルをMoodleに提出してください。
- ***.stl
- 画像をMoodleに提出してください。
- **.jpeg/png
発展課題
1階学生控室、302-1室(作業室)、306室など、文情関連部屋のドアに貼るような良い感じのプレートを作ってみてください。
※ モデリングの基本である足し算/引き算/掛け算を把握していれば他のツールも使用できるかと思います。
※ チャレンジしてみたい方は Blender や Autodesk Fusion も使ってみましょう。
Blenderは無料の学習教材が豊富にありそうです。
Autodesk Fusionは日本語の公式チュートリアルあります。
提出内容(3つ)
- 3Dプリンタで出力したネームプレートを作業室に置いてある箱に提出してください
- stlファイルをMoodleに提出してください。
- ***.stl
- 画像をMoodleに提出してください。
- **.jpeg/png